大判例

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札幌高等裁判所 昭和27年(う)670号 判決

職権により調査すると原審第七回公判期日において検察官は昭和二十七年七月九日附起訴状記載の公訴事実第四につき「被告人田尻五郎及び阿部定雄は共謀の上」とあるを「被告人田尻五郎、阿部定雄及び松尾徳市は共謀の上」と訴因の変更を申立て、原裁判所はこれを許可していることが記録上明かである。右訴因の変更は被告人田尻同阿部の二名の共謀として起訴したものを被告人田尻同阿部同松尾の三名の共謀としたものであるところ、被告人松尾に対しては右第四の事実については記載がなかつたものであるから新しい公訴事実といわねばならない。従つて追起訴するは格別訴因の変更は許さるべきものでないのである。然るに原裁判所がこれを許しこれに基ずき審判をしたのは訴訟手続に法令の違反がありこの違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、被告人松尾に対する関係においては原判決は破棄すべきである。更に同公判期日において検察官は昭和二十七年七月九日附起訴状の公訴事実第五の公訴事実(一)乃至(九)を第四の公訴事実と訂正、その(一)乃至(九)の符合を削除する。第一の昭和二十七年三月二十五日珪素板一屯四分を窃取したとの公訴事実はトランス内より取り出した時が窃盗の既述と認められるからこれを、

昭和二十七年二月二十九日頃 珪素板 二十五貫

同年三月一一日頃 同 二十五貫

同年同月初旬頃 同 三十貫

同年同月七日頃 同 三十貫

同年同月八日頃 同 二十五貫

同年同月九日頃 同 二十五貫

同年同月十二日頃 同 二十四貫か二十五貫

同年同月十三日頃 同 三十貫

同年同月十四日頃 同 三十貫

同年同月十五日頃 同 三十五貫

同年同月二十日頃 同 六十貫

同年同月二十五日頃 同 三十貫

を窃取した。との数罪に変更する。

第四の昭和二十七年四月中旬頃窃取した珪素板一屯も前同様の理由により、

昭和二十七年四月十二日頃 珪素板 百貫

同年同月十三日頃 同 百貫

同年同月二十二、三〇日頃 同 六十貫

を窃取したとの数罪に変更する。と申立て原裁判所はこれを許可していることはこれまた記録上明かである。右変更前の起訴状の公訴事実は前者は「昭和二十七年三月二十五日頃珪素板一屯四分を窃取し」とあり後者は「同年四月中旬頃珪素板一屯を窃取し」とあつて明かに単純な一個の窃盗と特定して起訴されたもので、これを数個の併合罪に変更されたものであるが、訴因の変更は公訴事実の同一性を害しない限度においてのみ許されるのであつて起訴状記載の訴因が包括一罪か併合罪か必ずしも明瞭でない場合は格別本件のように明かに単純な一個の窃盗罪が数罪となる場合は変更前の公訴事実の部分を除き公訴事実の同一性の関係を有しない別個の犯罪事実であるから、訴因の変更は許されないのであつて別個の起訴を要するものと解すべきである。しかるに原裁判所が訴因変更手続により審判したことは訴訟手続に法令の違反がありこの違反は判決に影響を及ぼすことが明かであるから、被告人田尻、同松尾、同阿部の関係において原判決は破棄を免れない。

よつてその余の論旨に対する判断を省略し被告人片山については刑事訴訟法第三九六条、第三八一条により、その他の各被告人については同法第三九六条、第三七九条により原判決を破棄し、被告人片山に対しては同法第四百条但書により更に判決をし、被告人田尻、同松尾、同阿部に対する部分は同条本文により原裁判所と同等の旭川簡易裁判所に移送することとする。

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